読み手が不快に感じる文面
契約や約束をとりつけたが、納期が過ぎても連絡がこない… よくある話です。契約書で損害賠償などが締結されているときは別ですが、大抵の場合取引先や目上の人に対して催促の連絡をするときは大変気を遣うと思います。これは英語便メンバーの体験談ですが、海外在住のライターへの催促で、”The deadline for the project is today. Could you send me the file ASAP?” とメールを出したところ、挨拶やお詫びの言葉はなく、添付ファイルのみが返信されてきたそうです。その後彼女はショックで、しばらく英文メール恐怖症になってしまったといいます。
この場合、ファイルは受け取れたので目的は達成できたといえます。しかし、同僚へ送るメールならよいのですが、取引先や目上へ出すメールとしては文面が直接的過ぎました。受け取った相手は、文面が無礼なので不快に思い、返信に挨拶やコメントを書かなかった可能性もあると思います。
圧力感のない催促とは?
さて、彼女のメールをソフトな言い方にするには、”I am writing to remind you that the deadline for the project is today. ” という言い方があります。しかし、I am writing ~ で始めてしまうと、書いた人が主権を持っているように聞こえるので、取引先や目上の人への文として適切ではありません。こういう場合は、以下のようにEメールを主語にすることで、読み手への圧力感がなくなります。
This email is a reminder that the deadline for the project is today.
このメールは、今日がプロジェクトの締切りであることをお伝えするためのものです。
また、トーンを和らげるために、以下のように gentle, またはfriendlyを加える文がよくつかわれます。
This is a gentle reminder that ~ / This is a friendly reminder that ~
※ reminder — 思い出させるもの・注意・催促といった意味で、相手が遅れているのか、忘れているのか状況がわからないときに「ご存知と思いますが、〇〇は××ですよ」という確認の意味で使われます。納期の前や経過後の催促、またはミーティングの前日などに再確認で送るメールなどによく使われます。 |
あまり効力のないASAP
催促のメールではよくASAP (as soon as possible)が使われますが、実はあまり効力がありません。というのは、send it ASAP 早く送ってください と言われても催促や督促が送られる時点で、メールの受け取り側には「遅れている」「またはすっかり忘れている」事情がある可能性が高く、早く送ることはできないであろうと考えられるからです。
このため、ASAPを使う場合でも、同時に締切は何月何日で、あと待てるのはいつまで(例) by 5pm on Oct 5 のように、日付と時間を明確に書く方が効力があります。
納期の考え方には温度差がある
締切や納期の考え方には業界や人によってかなりの温度差があります。第一線の企業でも、納期はあってないようなものと考える人たちもいます。一方、新聞記事のように納期が確実に守られているものもあります。メールを送っても一向に返事がこなかったり、納期が常に守られないというときは、相手が納期を重要と考えていない可能性があります。このため、催促メールの中で、納期が重要である理由を伝えると大変有効です。理由を書くことで、はじめて読み手はこちらの事情がわかり締切の重要性を理解してくれるわけです。
まとめますと、丁寧かつ有効な催促・督促のメールのポイントは以下の3点です。
1. 丁寧なreminder 2. 納期を詳細に伝える 3. 納期・締切りが重要である理由を伝える |
催促・督促サンプルメール
以下は、納期までに作品が送られてこなかったときの催促メールの例です。
Dear Mr Townsend, This email is a friendly reminder that the deadline for the project was at 10:00 today. It is important that we receive the work immediately because it needs to be sent to the printer this evening. I look forward to receiving the work from you. Best Regards, Paul (日本語訳) 念のためお伝えしますが、プロジェクトの締切りは今日の10時でした。今夜印刷にまわさなければならないので、作品をすぐ送っていただく必要があります。 ご連絡お待ちしております。 よろしくお願いいたします。 Paul |
Eメールでできることはここまでです。それでも相手から返信が来ないときは、電話をかけることになると思います。ネイティブスピーカーがノンネイティブスピーカーと仕事する場合、もちろんパーフェクトな英語は期待されていないのですが、催促のように感情が絡む場面では、「適切なものの言い方」を知っていることで読み手の気持ちを動かし、ビジネスをより成功に近づけることができます。難しいことですが少しずつでも、より効果的な表現を身に着けていってください。