前回の記事では、英語の文章に「臨場感」を加える手法、Sensory Writing(感覚描写)をご紹介しました。今回はその実践テクニックを、さらに詳しく解説していきます。
前回記事はこちらです => エッセイや日記に劇的変化!Sensory Writingで表現力を磨こう – No.1 Sensory Writingとは?
Sensory Writingにルールはあるの?
厳密な決まりはありませんが、五感で体験できることを言葉にするのがSensory Writingの基本です。たとえば、地震を経験したことがなくても、以下のような別の感覚的体験を通してその雰囲気を描写することができます。
「ゼリーが震える様子を見た」→ they have seen Jello wiggle
※ Jello -「甘いデザートのゼリー」のことです。特にアメリカではJell-Oというブランド名が有名で、その名前が一般名詞のように使われています。
「バウンスハウス(子供が遊ぶエア遊具)の中にいるようだった」→ it felt like being in a bounce house
「ベッドの頭の部分が繰り返し壁に当たる音を聞いた」→ they have heard a bed’s headboard hit the wall repeatedly
このように、別の感覚の記憶を活用して描写することで、読者にもリアルな感覚を届けることができます。
効果的なSensory Writingの使い方とは?
英語学習の観点からは、「できるだけ詳細に書く」ことも重要ですが、印象的な文章に仕上げるには「焦点」を絞ることがポイントです。全体を細かく描写するのではなく、読者に感じてほしい一瞬の感覚にsensory writingを使います。 以下に、焦点の当て方が異なる3つの例を紹介します。
(例1)木陰でのひととき(触覚・聴覚)にフォーカス
全体の雰囲気は簡潔に述べ、木陰の感覚にだけ焦点を当てています。
The park was quiet as usual. She sat beneath the old oak tree, and the cool grass pressed against her palms while a soft breeze rustled the leaves overhead like whispered secrets.
公園はいつも通り静かだった。彼女は古いオークの木の下に座り、ひんやりとした草が手のひらに触れた。その上では、柔らかな風が木の葉を「ひそひそ話」のように揺らしていた。
(例2)トーストのひとくち(味覚・嗅覚)にフォーカス
一瞬の味覚・香りを鮮やかに切り取り、日常に特別感を与えています。
Breakfast was quick and simple. But as soon as she bit into the toast, the buttery crust released a warm, nutty aroma, and the sharp tang of raspberry jam made her lips pucker slightly.
朝食は手早く簡単だった。しかし、トーストにかぶりついた瞬間、バターのきいたカリカリの皮から温かく香ばしい香りが立ちのぼり、ラズベリージャムの鋭い酸味が彼女の唇をすぼませた。
(例3)雨に濡れ始めた瞬間(触覚・視覚)にフォーカス
雨の情景すべてではなく、「濡れ始め」に絞って描写しています。
He rushed outside without an umbrella. The first raindrop hit his cheek like a cold finger, and soon his shirt clung to him, heavy and transparent with water.
彼は傘も持たずに外へ飛び出した。最初の雨粒が冷たい指のように頬に当たり、やがてシャツは水を含んで重くなり、肌に張りついて透けてきた。
以上、2回にわたってSensory Writingの魅力とテクニックをご紹介しました。ぜひ日々のライティングに取り入れて、読む人に”感じさせる”英語を目指してみてください。