ロバート・ヒルキ氏インタビュー 3.日本人と英語学習

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3.日本人と英語学習


Q. 日本では英語を「生涯学習」と位置付ける人が多いと思いますが、大人になっても楽に話せるようにならない事実があると思います。何名かの私たちのメンバーはTOEIC L/R 600を取得した時点で海外支社の責任者となり、現地の人とのコミュニケーションに日々大変苦労されています。日本人の英語学習速度が他の国の人に比べて遅い理由に何か思い当たることはありますか? 日本の英語教育独自の特徴は見られますか?

歴史的に、日本人の英語学習速度が遅いように見える理由は… “has been taught”(教えられてきている)というべきか“had been taught”(教えられてきていた)というべきかよくわりませんが、というのは日本の英語教育に実際シフトが起きているのを感じるからです。もちろん、私が日本に来たときは、文法による翻訳でした。1人の生徒が英文センテンスを読んで、次の生徒がパーフェクトに翻訳します。そして次の生徒が英語を読んで、次の生徒が翻訳する。これはかなり退屈なだけではなく逆効果です。なぜならば生徒たちが、もし100%理解できなかったら、完璧に理解できなかったら実際に話さないという感覚をつけてしまいます。日本では「とりあえず黙っているのが安全」という風潮もあります。いろいろな要因が合わさって、実際に言語取得の妨げとなっていたこともありました。

私のトレーニングの中で1つやっていることがあります。参加者へ「少々、変わった実践なのですが、協力してください。手を上げてください。MS-Excelを使ったことはありますか?」と尋ねます。もちろん、みんな手を上げます。少々バカバカしい質問です。「では、次の質問です。 この中で何人がExcelのエキスパートですか?」「あなたは黒帯級ですか?」「あなたは指導者ですか?」「どんな質問にも答えられますか?」「コースが開けますか?」もちろん誰も手を挙げません。つまりは、試行錯誤しながら、Excelをかなり適当に使っているということです。

日本において変わるべき1つのことですが、まず、「文法が重要ではない」とは言いません。文法は重要です。しかし文法が焦点であるべきではありません。コミュニケーションが焦点であるべきです。そして私は現在状況が変わりつつあると感じています。「英語はテスト教科であり、あなたの能力をはかるものです」という考えは徐々に消えてきています。そしてもう少しポジティブな傾向に変わっていっていると感じます。英語はコミュニケーションのためのツールです。日本が遅れている理由はどう英語が教えられてきたかというマインドセット(考え方の枠組)の問題です。そしてそのマインドセットは変わってきています。

一番大きなハードルはマインドセットです。実際に英語の4技能を考えたとき日本人が一番苦労してることは、いうまでもなくスピーキングです。そしてスピーキングが上達できない1つの理由は、大抵十分な機会がないことだと考えています。ただしこれには賛成できません。私がはじめて日本に来たときは確かにそうでした、ほとんど英語を話す人がいなかったのです。今、英語はあらゆる場所にあります。あなたが機会を作りたいと思えば実現できるのです。沢山のことがあります。例えば”Language Partner”です。私が国際基督教大学で教えていたとき、多くの生徒が武蔵境のイトーヨーカドーに行きます。すべての店に掲示板があります。海外から来た人を探す“Language partner wanted”というメッセージが掲載されています。例えば1日目は、2時間ぐらい英語を話します、次の日は日本語を話す。といった具合です。日本語を学びたい人と、英語を学びたい人のWin-Win Situationです。また、スカイプオンラインレッスンも非常にいいプログラムです。例えば月々5000円そこらで、ほとんど毎日話せるのです。 そう、より機会がありますね。

Q. 英語をがんばって学習しているけれど上達しない、何をすればわからないという学習者に対して何かアドバイスはありますか?

一番大きなハードルは、マインドセットです。マインドセットを変える必要があります。 英語をコミュニケーションの道具と考えてください。英語をがんばって学習しているけれど上達しない、何をすればわからないという人へのアドバイスは、英語を使う機会をもっと探してくださいということです。上達しないと感じている人はたくさんいると思います。可能性はいくつかありますが、まず単に机でテキストを使って学習しているということです。いくらテキストブックが良く作られていても、実際にどのくらい上達できるかということには限界があります。実際に英語を使いましょう。時々デスクから離れて英語で人とかかわってみましょう。会話のクラスや、例えば英会話カフェなどです。英語を使える場所があります。
正直、言語の取得にただ苦しんでしまう人もいます。何人かの私の親しい友人は日本にかなり長い期間住んでいますが、日本語がうまく話せません。いろいろな理由があって大人になってからは言語が習得できない人もいます。しかし、こういう人たちは少数派であり、事情が異なります。英語の環境に自分を置く努力をすれば、ほとんどの人の英語は上達します。そして上達すればするほど、いい反応が返ってきます。たまご-にわとり状態が確立するわけです。

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