文章パワーを失う不適切なsomeの利用

多用されるsome+ワード

 some, something, someone, sometimes は、特に日本人学習者がライティングでよく使う単語である。ネイティブ添削の英語便ではメンバーのライティングより定期的に「よく使われる単語」の傾向分析を行っているが、some、somethingなどのsome+ワードは常に上位に登場する。

  someには「いくらかの・ある~」、somethingには「何らかの(明言しない何か)」という意味がある。 これらは、直接すぎる言い方をやわらげたり、不確かな一般論を述べるときに、大変便利である。一方、日本語特有の間接的なものの言い方にうまく当てはまってしまうため、和→英で起こされた文章で多用され、あいまい、不自然になってしまっているケースも多い。実際、some, something, sometimes, someoneは、最もよく使われる単語である一方、英文添削で最もよく修正・削除される単語ともなっている。

不適切・不自然な利用の例

 以下の(1)~(8)は、some+ワードが不適切・不自然に使われている例である。これらの文章は、文法的には正しく、読み手へだいたいの意味も通じているが、ネイティブスピーカーが読むと、不明瞭・不自然と感じるものである。まずは(1)~(8)を眺めてみてほしい。理由が説明できないまでも、「何かがおかしい」と感じる人はすでにsome+ワードの感性を正しくとらえているので、このコラムを読む必要はない。何も感じない人という人は、後続の説明を読んでみてほしい。

(1) I can not handle them due to some reasons.
(2) The weapon would injure many people and possibly kill some people.
(3) Could you please wait for some more days?
(4) We can live without worrying about uncertain something.
(5) I have a strong desire to do something.
(6) It is often not easy to say exactly something.
(7) We sometimes had problems with our Internet provider.  
(8) It brings about someone’s death.

解説と添削例

(1) I can not handle them due to some reasons.

 おそらくは、いくつかの事情があって対処できない、ということであると思われるが、someを使うと「自分でもよくわからない事情」または「(ひとには言えない)何らかの事情」という意味に読めるため、必要以上に意味深な文章になってしまっている。本当に深い事情があるときはこの文でも問題ないが、単に「いろいろあって対応できない」という場合は、以下のようにvarious を使うことで自然に読める文章になる。 

(添削) I can not handle them due to some various reasons.

(2) The weapon would injure many people and possibly kill some people.

 「その兵器はたくさんの人を傷つけ、誰かの命を奪う可能性もある。」という日本語から起こされた英文と思われる。some people には 「何人かの人」「誰か」という意味があるが、前半のmany people「たくさんの人」に対して後半でsome people「自分の知らない(誰か)数人」が対比されていることで、読み手がsome peopleは誰なのか?と一瞬迷ってしまう。後半のsome peopleを削除することで、「その兵器はたくさんの人を傷つけたり、命を奪う可能性もある」という自然な文章になる。

(添削) The weapon would injure many people and possibly kill some people.

(3) Could you please wait for some more days?

 英語としては何も悪くないのだが、could you please wait ~ と待ってもらえるように丁寧にお願いしている割には、some more days =「あと何日間か」という部分があいまいで、自分でもよくわからないが、とにかくもう少し待ってほしいという意味合いになっている。もちろん、借金の返済など、いつになるかわからないがその場しのぎで待ってほしいというときはこの文章で問題ない。ビジネスにおいては、例えば以下のように a few days (数日)とするか till Monday (月曜まで) のように期限がわかる形にするべきである。

(添削) Could you please wait for some more days a few days?

(4) We can live without worrying about uncertain something.

 uncertain something 「不確かな何か」は英語としては全く問題ないが、We can live 「生活する、生きていく」というしっかりした内容の前半に対して、後半の意味があいまいになってしまい、バランスを欠いた文章になっている。推理小説のように読み手に類推させることを狙っているのであれば問題ないが、意見を述べるエッセイでは不自然に聞こえる。something (何か)ではなく、things (物事)と変更することでしっかりした文章に聞こえる。

(添削) We can live without worrying about uncertain something things.

(5) I have a strong desire to do something.

 強い欲望があるという強い前半に対して、後半がto do something (何だかわからないが)何かを行う と弱くなっており、後半で書き手が急に自信喪失したように聞こえてしまう。”something more creative” のようにもう少し具体的に書くか、または something 「何か」の代わりに、anything 「いかなることでも」へ変更することで良い文章になる。

(添削) I have a strong desire to do something anything.

(6) It is often not easy to say exactly something.

 「正確に何かを伝えることは簡単ではない」といった趣旨の日本語からの文章と思われるが、英語においてはsomething があいまい過ぎて不明瞭な文章にきこえる。例えば、以下のように、what I want to say を使うと、「言いたいことを正確に伝えることは簡単ではない」という自然な文章になる。

(添削) It is often not easy to say exactly something what I want to say.

(7) We sometimes had problems with our Internet provider.  

 sometimesも必要以上に多用されている単語の1つである。英文自体は何もおかしいところはないのだが、「問題がありました」と伝えるときに、「時々」と入れていることで、読み手に「問題を解決してほしい」という気持ちが伝わらなくなっている。(つまり、友人へ世間話として伝えているのであればこの文章で問題ない) 問題を報告することが目的であれば、have been having ~ 「問題が起きています」と率直に伝える方がよい。 

(添削) We sometimes had have been having problems with our Internet provider.

(8) It brings about someone’s death.

 「誰かの死をもたらす」という意味で書かれていると思われるが、死は誰かにもたらされるものなので、冗長であり不要である。

(添削) It brings about someone’s death.

読み手を意識する

 説明を読んでもよくわからない、添削前の文章の方がしっくりくる、または、仕事で和→英で忠実に英文を生成することを求められているので、勝手に語句を変更できないという人は、無理に自分の英文を変えようとしなくていいと思う。 ただし、練習であっても「読み手にどう伝わっているか」ということを常に意識することで文章の品質を上げることができる。せっかく書いた文章があいまい、不明瞭でパワーを失っているのはもったいない話である。
 some somethingのようなsome + ワードは、便利な単語なので上手く使えば、文章をより洗練させることができる。しかし、上記のように逆効果になっていることも多いので注意が必要である。ニュアンスを理解したうえで、適切に使っていく必要がある。 

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