「歯ごたえ」は英語で何という?– 英訳が難しいビジネス英語表現

デイビッドセインさん 辞書を引いて英訳した単語が、海外では異なって解釈されていることがよくあります。当シリーズでは英語、日本語両方を熟知し、多数の英語書籍を出版しているデイビッド・セインさんが言葉の意味や用法、また文化背景について解説します。

第16回は「歯ごたえ」の英語表現を解説します。

 ビールのおいしい季節とあいまって、前回の「のどごし」のアクセス数が非常に良かったようです!
 そこで今回は食感シリーズ(?)の続編で「歯ごたえ」を英訳してみましょう。「歯ごたえ」とイコールになる英単語はありませんから、感覚を表現しなくてはいけません。さあ、どうすればいいでしょう?

「歯ごたえのあるうどん」を英訳すると?

 歯ごたえ」には大きく2つの意味があります。ものを噛んだ時、歯に感じる抵抗を指すのであれば、英語ならふつうはfirm dense 、はたまたchewy なんて単語を使って表現します。
では、次の日本語をあなたならどう訳しますか?

「歯ごたえのあるうどんを食べた」

「歯ごたえのある」とは「口に入れ、噛んだ感じが心地よいこと」を指します。
この文は、うどんの歯ごたえを経験したことのない人だと訳すのが難しいでしょう。うどん好きの私なら、次のように訳します。

(1) The udon noodles we had were pretty firm.

(2) The udon noodles were chewy.

 (1)はどちらかというと、うどんのコリコリした歯ごたえを楽しんでいるニュアンスが出ています。一方(2)は、うどんの腰のある噛み切れなさが伝わる文章で、そのまま餅にも使えそうな表現です。
 ただしpretty firmやchewyは悪いニュアンスでも使えるため、「いい意味での歯ごたえ(噛んだ感じの心地よさ)」を伝えるのなら、

(1-2) The udon noodles we had were nice and firm. または

(2-2) The udon noodles were nice and chewy.

などと語を補えば、間違いなく「良い意味での歯ごたえ」だと伝わります。

「歯ごたえのある相手」「歯ごたえのない敵」を英訳すると?

 「歯ごたえ」はもう1つ、「(何らかの働きかけに対する)手応え、反応」を指す場合があります。スポーツにつきものの表現ですが、次の日本語をあなたならどう訳しますか?

「明日は歯ごたえのある相手と対戦する」

この場合の「歯ごたえのある相手」とは、戦うだけの価値がある敵を指します。

(3) Tomorrow I have to go up against a really tough opponent.

(4) Tomorrow’s opponent is going to be tough.

 いずれも toughを使って表現しました。toughには「しぶとい、粘りのある、骨の折れる」といった意味があるので、1語としては「歯ごたえ」に一番近い単語でしょう。
では、次はどうでしょう?

「明日は歯ごたえのない敵と対戦する」

「歯ごたえのない相手」とは力量に差がありすぎて、戦う価値がない相手を指します。「歯ごたえのある」の否定形とも言える表現ですが、どう訳せばいいでしょうか?

(5) Beating tomorrow’s opponent is going to be super easy.

(6) Tomorrow’s opponent is going to be a cakewalk.

「歯ごたえのない」=「(敵は)弱い」、「簡単に勝てる」と解釈できます。そのため(5)ではsuper easy(超簡単)、(6)ではcakewalk (たやすいこと)という単語を使って表現しました。

 日本語では「ある/ない」だけの違いですが、英語にする場合、ただ否定すればいいというわけではありません。この辺りが、日英翻訳の面白いところでしょう。

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