センテンスフォーカスの変更 No.3(効果的な強調構文) – 文章スタイル向上のヒント

 同じ意味の英文でも、意識して語順や文法を変えることで読み手に与える印象やインパクトを変えることが可能です。当シリーズでは、文型を変更することで読み手のフォーカスを変えるテクニックを解説します。第3回は、強調構文の効果的な使い方についてご紹介します。

強調の文章構造

 文法書の「強調構文」の章では基本的にIt is + 関係代名詞を使った構文を説明していますが、当記事では文法構造にしばられず、”Emphatic sentence structure” (強調する文章構造)という広い意味で、実際に日常会話やライティングでフォーカスの変更に使われている文章構造について説明していきます。 まず、どんなものがあるか見てみましょう。

(1) It is + 関係代名詞を使った強調構文 

 以下は、It is + 関係代名詞を使った強調構文の例です。強調する品詞によって文法的な細かい分類があるのですが、ここではよく使われるいくつかの文型をご紹介します。

(A) It’s the person/one who/that ~ (人にフォーカス)

It was he who taught me English.
彼が私に英語を教えてくれた人です。

(B) It’s a place where ~ (場所にフォーカス)

It’s the park where I met many local friends.
その公園が、私がたくさんの地元の友人に出会った場所です。

(C) It’s a tool that ~  (物にフォーカス)

It’s the application that quickly helps us find files and folders on our computer.
これが、PCでファイルやフォルダーを素早く見つけられるアプリです。

(D) It’s a time when ~ (時間にフォーカス)
It was this year when she was promoted.
彼女が昇進したのは今年です。

(2) Whatで始まる強調構文

(A) What ~ (行動/イベントにフォーカス)

What I love the most about Tokyo is the nightlife. 
東京で一番好きなことは、夜の娯楽です。

(3) フォーカス対象を先出して強調する構文

Midnight is when I usually go to bed.
深夜が通常寝る時間です。

The thing (that) I love the most about Tokyo is the nightlife.
東京で一番好きなことは、夜の娯楽です。

強調構文の効果的な使い方

 次に、強調構文の効果的な使い方についてご紹介します。構文は知っている方が多いと思いますが、実際にどういう場面で使うと有効でしょうか?例を見てみましょう。

 今、あなたの目の前に海外から日本に移り住んだ人々がいるとします。あなたはインタビューで以下の質問をします。
What are the best things about living in Japan?

2人の人が回答します。

Speaker A: I really like the people and the climate in Japan.
私は日本の人々と気候が本当に好きです。

Speaker B: Two things that I really like about life in Japan are the people and the climate.
日本の生活において本当に好きな2つのことは、人々と気候です。

 どんな印象の違いがありますか? Speaker Bは強調の構文を使って回答しています。やや複雑な構造になりますが、Bの構造の方がより印象的な回答となっていることを感じていただけると思います。

 重要なポイントは、強調構文を使うときには、単に文の構造を変更するだけではなく、インパクトを意識して全体の文のバランスを考えることが重要です。別の回答も併せて見てみましょう。

Speaker C: Well, for me, the most striking aspects about Japanese life that come to mind would have to be the incredible public transportation and the food.
そうですね。私にとっては日本の生活で最も印象的で、思い浮かぶことは、素晴らしい交通機関と食べ物です。

 Cの回答では、単に文の構造を変更しているというだけではなく、striking (印象的な) 、incredible (信じられないほど素晴らしい)という強い形容詞を使っています。また、Well, 「そうですね」と一泊入れ、さらにfor me「私にとっては」という部分により主張が強くなりすぎないようバランスをとっています。

 良い文章を作成するためには、単に文型を変えるのではなく、強調するための単語の選択や全体のトーンに配慮し、「強調構文を活かす」ことを考えることが必要です。
 ※ また、動詞の後ろにdo を追加することで、さらに強調を示すことができます。

Two things that I do love about life in Japan are the seasons and the people.

  強調構文のもう1つの効果的な使い方は、エッセイライティングのパラフレ―ジングとしての利用です。多くの資格試験エッセイにおいて、Sentence variety (多用なセンテンスが利用できていること)が採点基準になっています。

  以下の(A)と(B)は同じ意味の文ですが、(B)の方は強調構文を使っています。例えば(A)をパラグラフのトピックセンテンスとして用い、(B)の文を結論でパラフレーズすることで、文の多様性を出しかつ説得力のある文章にすることができると思います。

(A) The government needs to limit the level of violence on television in order to reduce violent crime numbers in society.
政府は、社会での暴力事件を減らすために、テレビにおける一定の暴力(コンテンツ)を規制すべきです。

(B) What the government needs to do is to limit the level of violence on television in order to decrease the violent crimes in society.
政府がすべきことは、社会での暴力事件を減らすために、テレビにおける一定の暴力(コンテンツ)を規制することです。

 以上、構文を変更してフォーカスを変える方法について説明しました。ぜひ実際の会話やライティングで使ってみてください。