「じわる」「エグい」「エモい」は英語で何という? – 英訳が難しいビジネス英語表現

デイビッドセインさん 辞書を引いて英訳した単語が、海外では異なって解釈されていることがよくあります。当シリーズでは英語、日本語両方を熟知し、多数の英語書籍を出版しているデイビッド・セインさんが言葉の意味や用法、また文化背景について解説します。

第23回 は「じわる」「エグい」「エモい」の英訳にチャレンジします。

 最近の流行り言葉は、感覚的な表現が多いように思います。そのため私たち外国人は、意味を理解するのに非常に苦労します。
 「じわる」「エグい」「エモい」と言われて、即座に相槌を打てる外国人はそうなかなかいないでしょう。聞き間違いかと思い、何度も聞き返してしまうのが関の山です。
今回は、そんな外国人泣かせの新しい感覚表現を英訳しましょう。

「じわる」とは…

 何かの会話の際「さっきの話がじわってきた〜」と言われ、何が何だかさっぱりわかりませんでした。「じわる」という言葉を聞いたことがなかったからです。
 動詞? それとも副詞? などと疑問に思っていたところ、どうやら「さっき聞いた話が、後からじわじわ笑えるようになってきた」という意味だと、話の流れからわかりました。
「笑いなどが時間をかけて浸透してくる」という感覚が、見事に「じわる」の1語に凝縮されています。

では、ジョークを言われた後に「じわるわ〜」と反応するなら、どのように英語で表現すればいいでしょうか? 

It takes a few seconds to sink in. 

 直訳は「理解するのに少し時間がかかる」ですが、転じて「(ジョークが)浸透するのにちょっとかかる」→「じわるわ〜」と、まさに日本語と同じようなニュアンスのフレーズになります。
 sink inは「浸透する、身にしみる、十分に理解される」という意味なので、「じわる」を表すには最適です。

 では、「さっきのギャグ、じわるわ〜」と主語をつけて言うとどうなるでしょうか? 先ほどのフレーズをそのまま応用すれば、次のようになります。

That joke takes a few minutes to sink in.

 Itをそのまま別の主語に変えれば大丈夫です。人を主語にして表現するなら、次のように英訳してもいいでしょう。

Everyone had a delayed reaction to his joke.

 「みんな彼のジョークが後から効いてきた」→「ギャグが後から効いてきた」→「さっきのギャグ、じわるわ〜」と、まさに日本語の「じわる」と同じようなニュアンスになります。

「エモい」?!

 ある時、打ち合わせ中に「ホテル・カリフォルニア」が流れてきて「この曲、エモいですね」と言われました。

「エモい」?! 

「キモい」は聞いたことがありますが、「エモい」は初めてです。
どうやら「哀愁のあること、切ないこと、感動することを指す言葉で、なんと英語のemotionalを元にした言葉」のようです。英語が語源なら、英訳も簡単かも(?)しれません。

 では「この映画の最後、まじでエモい」を英訳してみましょう。
このコーナーで私が出題すると、みなさん深読みして難しい英語を、難しい英語を…と考えてしまうかもしれません。でもこれは「エモい」の元となった言葉、emotionalを素直に英訳すればOKです。

The last part of the movie was really emotional.
That movie had a really emotional ending.

 シンプルな英語になりました。それにしても「エモい」とはよく考えたもの。これなら英語感覚そのままなので、外国人も気軽に使えるでしょう。

「エグい」?!

 ではもう一つ、最後に「きつい」「すごい」など、ものすごく大変な状態を表す言葉「エグい」に挑戦してみましょう。

 「その仕事は冗談抜きでエグい」を英訳すると、どうなるでしょう?

That job is seriously tough.
That job is a big pain in the ass.
That job is a huge headache.

 実はこれも、「きつい」「すごい」を表す形容詞=toughやterribleといった言葉を使えば、簡単に表現できます。一見難しく感じる言葉も、意外に平易な英語に置き換えられることが、わかりましたか?

 英訳は「脳内変換力」がモノを言います。さまざまな言葉に触れることで、ぜひその変換力を磨いてください!

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