英検1級合格者とTOEIC900点取得者の英文ライティングはレベルが高いのか?

資格試験ための英語学習については様々な議論があるが、英検1級合格者やTOEIC L/R 900を持っている人の英語運用能力は実際どうなのか?

ネイティブ添削で学ぶ英文ライティング – 英語便(www.eigobin.com)」では、会員が執筆したライティングの分析を定期的に行っている。今回は、資格試験別の分析結果の一部をご紹介したい。

以下にご紹介するデータは、学習者の中でも資格取得者が多い英検とTOEIC L/R (Listening & Reading)に関するものである。それぞれの資格・スコアに該当する英語便の添削利用者(資格は自己申請, 年代は10代~80代)を100名ずつランダム抽出し、2017年4月より過去6か月間に執筆した全ジャンル(エッセイ・日記・メールなど)をネイティブ講師が添削した結果を集計している。


※ 本来TOEICに関してはSW (Speaking & Writingテスト)のデータについても分析すべきであるが、2017年5月現在、SW受験者数が十分でなく、幅広いスコア獲得者のデータが取得困難である。 SW試験の集計は今後の課題とさせていただきたい。

多様なボキャブラリーを使う英検1級合格者

以下の表は、それぞれのグループ100人が過去6か月間に執筆した文章の中で、1か月間に平均何種類の単語を使ったかという集計である。

英検級 単語数 TOEIC L/Rスコア 単語数
英検1級 840 TOEIC 900以上 780
英検準1級 784 TOEIC 800-899 687
英検2級 711 TOEIC 700-799 561
資格申請なし 476

上記集計より、英検・TOEIC L/R ともに上級になるほど幅広いボキャブラリーを使っていることがわかる。また、英検1級合格者のボキャブラリーが特に幅広いことが証明されている。もちろん日常の経験や、他の学習との相乗効果もあるが、平均的に英検1級で出題される難解な単語問題を克服していること、またエッセイ執筆においてパラフレーズを使って多様な表現を使う努力をしている人が多いためと予測される。
また、資格申請なしグループと英検1級取得者の使用ボキャブラリー数に倍近くの差があることがわかる。

試験合格者のライティングは精度が高い

以下の表は同調査において、ライティングの中で基本文法16項目(名詞の単数・複数、時制、形容詞や副詞の使い方など)でエラーが発生する確率を示している。

英検級 エラー発生率 TOEIC L/Rスコア エラー発生率
英検1級 7.1% TOEIC 900以上 8.7%
英検準1級 9.77% TOEIC 800-899 10.69%
英検2級 11.22% TOEIC 700-799 13.22%
資格申請なし 17.43%

上記では、英検1級グループの人は英文ライティングにおいて100個の文法項目のうち7つ程度の誤りがあることを示している。この数値については、ネイティブでもケアレスミスで、校正前は3%前後の誤りが出ることが実験済である。英検1級合格者はきわめて正確な文章を書いているといえる。TOEIC 900以上のグループも8.7%と文法エラーが少ない。当データについては10年間毎月集計を行っているが、多少の数値変動があっても英検1級グループとTOEIC 900以上のグループのライティング精度の高さが毎回証明されている。また僅差ではあるが、英検1級グループの文法精度が6グループ中で常に1番高いということも不変である。
文法についても、英検・TOEIC L/R ともに試験で上級になればなるほど、文法が精密になることがわかる。また資格申請なしグループに比べ明らかな精度の差異が見える。

どの程度ネイティブスピーカーに通じているのか?

では、「書かれた文章がネイティブにどのくらい通じているか」という指標が以下の表になる。 不明瞭率は、執筆文章の中にネイティブが意味が不可解、または不明瞭と感じる文章が発生する確率を表している。

英検級 不明瞭率 TOEIC L/Rスコア 不明瞭率
英検1級 1.73% TOEIC 900以上 1.76%
英検準1級 1.71% TOEIC 800-899 1.87%
英検2級 1.85% TOEIC 700-799 1.70%
資格申請なし 1.96 %

結論からいうと、この結果については、グループ差が出なかった。たとえば、不明瞭率が1.7~1.8ということは、100センテンスに2センテンスぐらいの割合で、ネイティブから見て意味の分からない、分かりづらい文章が発生するということになる。

この数値が高いか低いかいうと、ノンネイティブにしては良い(不明瞭率が低い)と思われるが、データ取得した「英語便」がライティング学習サイトであり、調査対象者は同様のライティング教育を受けていることが数値の差異が出ない原因とも思われる。
質の高いライティングを行うためには(スピーキングもであるが)ボキャブラリー、文法だけではなく、ロジック、トーン、ニュアンス、文章構造など様々な要素が必要となってくる。 ネイティブスピーカーを読み手として総合的な視点でライティングを見たときには、直接「高い資格試験を持っている人=ライティング能力が高い」ということにはならないようだ。 事実として、英語便が毎月実施している課題のコンテスト(総合的にすぐれた文章が選ばれる)では必ずしも英検1級合格者やTOEIC高得点取得者、または他の専門資格を持っている人が選ばれているわけではないという事実もある。

今回の調査結果をまとめると、英検、TOEIC L/Rで上級の資格や高い点数を取得している人は広いボキャブラリーを持ち、精度の高い文法を使って文書を書いていることがわかった。広いボキャブラリーは表現力を高め、精密な文法によりより状況を正しく伝えることができることは説明するまでもない。

「試験のために学習するのか?」「学習の成果を試すために受験するのか?」たとえどちらであっても、資格試験の合格や点数向上は英文ライティングの質に反映されているといえるであろう。ただし、ライティング全般を向上させるには、文法や語彙だけではなく、ロジック、トーン、ニュアンス、文章構造含め総合的に学ぶ必要がある。もちろん実践での経験値も重要となる。そういったことを踏まえて資格試験の学習を活かしていくことが重要であると思われる。

当記事は、ネイティブ添削で学ぶ英文ライティング – 英語便(www.eigobin.com)」編集部が作成しています。

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