海外業務・外資系 – 「通じるレベルの英語」で大丈夫?

企業・学校の英語研修

 2017年度に「英語便」が提供した企業研修においては、海外支社赴任が決定した社員様向けの英文Eメールライティング研修のご利用が最も多かった。全体的には、シンガポール、アメリカ、インド、ドバイなどへの赴任予定の方が多く、またすでに海外支社で勤務されている方のオンラインコース受講数も増加した。
 受講対象の方のレベルは様々で、英語に自信がある方もいらっしゃれば、第一線で仕事をしていても英語はどうにも苦手という方もかなりいらした。研修の説明会では「通じるレベルになればなんとかなるものですかね?」と不安を表す方もいらした。
 海外業務に必要な英語をどのレベルで目指すかということは、もちろん業務やポジションによりかなり異なる。そして「通じるレベル」はコミュニケーションに必要な最低ラインになると思う。そしてたしかに「通じるレベル」でも乗り切れる仕事も存在する。以下、例を挙げて考えてみたい。

通じるレベルの英語?

 「通じるレベルになればなんとかなるか?」というご質問に対しては、以下の方法でご自分で判断いただくことをお勧めしている。まず、現在自分が行っている日常業務を「日本語がなんとか通じるレベルであってもやりとげられるか?」という視点で考えていただきたい。
 例えば、あなたが「財務諸表を作る担当者」であり、通常の作業過程では大きな問題が出ない限り、定型なやりとりで業務がこなせる場合には、海外でも「英語が通じるレベルでなんとかなる」と考えて良いと思う。しかし、もしあなたが人事部の責任者であり、リストラの交渉を行ったり、パワハラの相談を受けたりする立場だったとすると、英語が通じるレベルでは切り抜けられないだろう。

 これはある、国内企業のソフトウエア開発現場の例である。このプロジェクトではオフショア開発(海外へ開発をアウトソース)を行っており、インドを中心に他の国々からも多数のプログラマーが参加している。プロジェクトの公用語は当然英語である。日本側のスタッフはTOEIC L/R 400-500という人が多く、ほとんどの人は英語のコミュニケーションに不慣れであるにもかかわらず、プログラムの仕様やスケジュールの打ち合わせは、”This after that”, “A is OK, B is NG” という暗号のような英語でなんとかやりとりできているという。この場合「通じるレベルの英語」でなんとかなっているのである。
 しかし、オフショアチームの人の悩み相談に対応したり、価格交渉や遅延スケジュールの調整を行ったり、トラブル対応が必要なときはどうだろう? 通じるレべルの英語はおろか、文法的にパーフェクトな英語を使っても相手が聞き入れてくれることは難しいと思う。実際このプロジェクトでは、しかるべきときには英語の得意な人が現れて通訳するなり、交渉を変わるなどの対応を取っている。

マネジメントやセールス業務は「通じるレベル」では難しい

 「人を管理する」「人を説得する」「人と交渉する」ということが必要な業務においては、より高いコミュニケーションスキルが求められる。 日本語、英語にかかわらず経験も必要である。マネジメントでは、人の心を動かすコミュニケーション力、セールス業務では顧客のニーズや要望に沿った提案、また医療やカウンセリングなど細かいコミュニケーションが求められるようなすべての仕事において、「通じるレべル」以上の英語力が必要となる。
 つまり、海外業務で自分の能力を発揮するためには、「現在日本語で行っているコミュニケーションスキルを英語版でも行えるようにする」ということが理想である。

正しい目標イメージを持つことと、学習方法が重要

 会話もライティングも急に上達することは難しい。海外プロジェクト参加が決まったからといって、あせって単語数を増やしたり、難しい英語の経済誌を急に読みはじめる人もいるが、まずは自分が現場で働いている姿を想定し、「自分には何が必要か」ということを抑えたうえで学習をすすめることが重要である。 例えば、英語便のEメール研修で「相手の変更要求に対応する」という課題に遭遇したとする。 課題を単にこなすためにテキストで学んだ表現をそのまま使うのではなく、できるだけ自分の業務で起きる可能性のある事例を想定してストーリーを加えた英文を作成し、講師の添削を受講すると、将来自分に役立つ教材が作成できる。ビジネスは英語の問題だけではないので、「こういう場合は英語でどう言ったらいいか?」という質問を講師へ投げて、事前に想定問答集を作っておくことも有効である。あとは現地で苦労しながら英語と格闘することになると思うが、ほとんど英語の初心者だった人が、アメリカへ赴任し、英語に苦しみながらも半年後には顧客を誘って飲みにいけるようになった という研修受講者の事例もあるので、あきらめずに学習を続けていただきたい。

外資系で必要な英語力は?

 日本企業での海外赴任と、外資系企業で働くことは全く別の事であるが、外資系への就職希望者からのご質問も多いので軽く触れておきたい。外資系企業といっても様々であるが、英語圏での勤務はもちろん、日本支社においても、英語ができることはあたりまえで、「英語力」=「コミュニケーション力」と判断している企業が多い。 こういった企業では、技術があっても、英語力、つまりコミュニケーション力がなく、自分の能力をプレゼンテーションできない人は活躍できないのである。
 一方、外資系企業でも、日本支社内では、本社とのやりとり以外は日本語で業務を行っている場合もある。中には、入社後の英語研修制度が充実していたり、会社が英語学校と提携し、業務時間に会社の費用で英語学習ができるような手厚い企業も実際に存在する。働きたい企業で実際に英語がどの程度必要であるかは、就職斡旋業者や働いている社員の話を事前に聞いてみた方が良いだろう。 
 しかし、外資系企業の現実は厳しく、M&Aで頻繁に組織が変わったり、日本支社の業績が悪化し、ある日マネージメント層がすべて本社から来た外国人に一斉に入れ替わり、以降は英語力の高い人しか主要ポジションに着けなくなったというような事例も多い。

英語を使う自分の未来を想像する

 英語研修や自己学習においては、与えられたものをそのままこなすのではなく、自分に必要な英語力をイメージしてそこに近づける努力を続けることが有効である。現時点で英語が必要でない人も、自分の現在の仕事を英語で行っているシーンを想像してみてもらいたい。
どんな英語力が必要で、どんな学習が有効であるか容易に想像できると思う。

フォローする