「底をつく」 「総合メーカー」 「増資」は英語で何と言う? – 英訳が難しいビジネス英語表現

デイビッドセインさん 辞書を引いて英訳した単語が、海外では異なって解釈されていることがよくあります。当シリーズでは英語、日本語両方を熟知し、多数の英語書籍を出版しているデイビッド・セインさんが言葉の意味や用法、また文化背景について解説します。

第28回は「底をつく」 「総合メーカー」 「増資」という3つの言葉の英訳にチャレンジします。

 ここ数ヶ月セミナーを開く機会が多く、「いかにも日本語らしい表現」について数多くの質問を受けました。

 みなさん口をそろえておっしゃるのは、「はやり言葉やビジネス用語は辞書を引けばわかるものの、辞書に載っていない『いかにもな日本語表現』を知りたい」ということです。 はじめ何のことかよくわからなかったのですが、具体的な例を聞くうちに、私も「なるほど」と激しく同意しました。「おつかれさま」「いただきます」を英訳するのが難しいように、こなれた日本語を英訳するのは本当に難しいのです…。

 実はこれから紹介する日本語表現は、辞書に載っていたとしても、ネイティブ・スピーカーが聞くと「?」となるものがほとんどです。辞書の英語は、英語的に通じなくもないのですが、解説がなければピンとこない表現だからです。

 私の英訳は、可能な限りネイティブに通じるよう置き換えたものです(場合によって、意訳になるものもあります)。
言葉は生き物ですから、翻訳ももっといい表現があるかもしれません。ここでご紹介するのは、私なりに現時点でベストと思い英訳した例ですが、もっといい表現があればぜひお教えください。明日にはもっといい表現が生まれているかもしれません。

では、あなたも次の日本語の英訳に挑戦してください!

1. 「底をつく」 – 在庫が底をついたので、急いで追加発注しないと。

2. 「総合メーカー」- 日本最大の医薬品の総合メーカーといえばABC 製薬だ。

3. 「増資」 – 弊社は昨年2億円の増資を行った。

ネイティブに通じるよう訳すと、次のようになります。

「底をつく」

在庫が底をついたので、急いで追加発注しないと。

We are out of stock and have to place an emergency order.

【解説】まずは簡単な問題から。これなら英訳できた人も、多いのではないでしょうか。

「底をつく」とは「在庫がなくなる、品切れになる」ということなので、be out of stockを使いましょう。

「注文する」は動詞のorderを使う人が多いでしょうが、何か品物などを発注する際は、place an orderのフレーズを使うといいでしょう。

動詞のplaceには「(注文書を)発行する」の意味があり、ビジネスで書類ベースの発注をする際はこの言い回しをよく使います。そのためTOEICでも頻出フレーズです。

「急いで追加発注する」は「緊急の注文をする」と考え、place an emergency orderとすればOKです。

これなどは、日常英会話ではいかにもよく使う言い回しですが、いざ「こなれた日本語から英訳」するとなると、ちょっとした発想の転換が必要です。

「総合メーカー」

日本最大の医薬品の総合メーカーといえばABC社だ。

ABC is Japan’s largest general manufacturer of pharmaceuticals.

【解説】そもそも「総合メーカーとは何か」と、改めて考えた人もいるでしょう。「総合メーカー」をall-embracing manufacturerと紹介している辞書もありますが、今一つピンときません。「特定の専門分野に限らず、全般的なものの製造に携わる企業」と解釈し、「全般の、概括的な」を意味するgeneralを使い、general manufacturerといえばネイティブにも通じます。

そもそも日本語の「メーカー」とは、maker(作る人、製造業者)からきた言葉ですが、ある程度の規模の企業を指すのであれば、manufacturerになります。

そのため「日本最大の…の総合メーカー」は、Japan’s largest general manufacturer of …と表現するといいでしょう。

ちなみにpharmaceuticalsと複数形で「医薬」、pharmaceutical companyで「製薬会社」です。

「増資」

弊社は昨年2億円の増資を行った。

 We received a 200 million yen injection of capital last year.

【解説】「増資を行った」を直訳しようとすると、「増資」の英訳で思考が停止してしまう人もいるでしょう。このように直訳しにくい文は、意訳して簡単に言い換えるのがコツです。そこで私は「追加で資金を受けた」→「資金注入を受けた」と言い換えてみました。

injectionは本来「注入、注射」といった意味の単語ですが、ビジネス・シーンでは「(資金の)投入、追加」の意味でよく使われ、injection of capitalで「資金注入」です。

「増資」はcapital increaseと辞書では紹介されているため、「capital increaseを使わなければ…」と考える人が多いようですが、単語にとらわれる必要はありません。

「2億円の増資を行った」を「2億円の資金注入を受けた」と解釈し、received a 200 million yen injection of capitalとシンプルに表現すれば、誤解されることなく通じます。