「忖度」は英語で何という? – 英訳が難しいビジネス英語表現

デイビッドセインさん 辞書を引いて英訳した単語が、海外では異なって解釈されていることがよくあります。当シリーズでは英語、日本語両方を熟知し、多数の英語書籍を出版しているデイビッド・セインさんが言葉の意味や用法、また文化背景について解説します。

第2回は「忖度」です。

日本人にも難しい言葉(?)忖度

今回は最近、世の中を賑わせている言葉を英訳しましょう。
「忖度」は、日本人でもなかなか日常的には使わない言葉だと聞きました。「他人の気持ちをおしはかること」だそうですが、日本人でもこの言葉自体を知らない人が大勢いるとか…。
この語が今回マスコミで頻繁に使われたのは「上司の気持ちを察して部下が便宜を図ったのではないか」という疑惑を表現するためです(実際は上司どころか、一国の総理大臣ですから、事は重大ですね!)。
日本語でも文章で解説しないとわかりにくいように、英語でもそう簡単に1語では言い表せない難しい言葉です。文脈により、表現を変える必要があります。

英訳のコツは「簡単に」!

このように難しい言葉を英訳する時は、あえて難しい英語で表現するより、一度簡単な日本語に直し、それを英訳するといいでしょう。意味を間違えては、元も子もありません。まずは確実に、言わんとすることを伝えましょう。
「忖度」を英語で説明すると、think about how someone feelsguess about the feelings of someone、 はたまたcare how someone feelsとなるでしょう。
会話で使う場合、次のような言い回しで表現するのが一般的です。

彼は相手の気持ちを忖度するような男ではないな。
I don’t think he’s the kind of guy that cares what others think.

そんなことを忖度する余裕は、私にはない。
I don’t have the capacity to think about that.

犯人の心理を忖度してみた。
I tried to imagine what the criminal was thinking.

あえて1単語で表すならば、empathizesympathizeが近いと思います。empathizeはunderstand and share the feelings of others(他者の感情を理解し共有する=感情移入する、共感する)、sympathizeはfeel sad about someone’s (bad) situation(他者の置かれた状況を哀れむ=同情する、共鳴する)ですが、try to sympathize や try to empathize などと、フレーズで表現してもいいでしょう。

ちなみに私が好きな日本語に「慮る」(give careful consideration)があります。「忖度」に似た響きもありますが、よりポジティブかつ日本人らしい細やかなニュアンスが表現できます。

I tried to give careful consideration to how he felt. (彼が感情を考慮しようとした[慮ろうとした])
You need to give careful consideration to the feelings of others. (他の人がどう感じるか十分に考慮しないと[慮らないと])

純粋に人の気持ちを推しはかるのであれば、「忖度」よりこちらのほうが喜ばれるでしょう。

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